ぜんぶ欲しくてたまらない。
「ねっ、そろそろ花火大会の会場行こうよ!」
「……ちょ、ねえ」
大人しくなったのもつかの間。
歩きにくそうな浴衣を着ているのに、俺の腕を掴んで走り始める梨里愛。
───本当に迷惑。
俺の力なら梨里愛の手なんか簡単に引き剥がせる。
できるのにそれをしないのは……俺の過去を芽依に知られるのが怖いからだ。
本当に自分が情けないと思う。
「ここ、ここっ!人が少ないけど穴場なんだって教えてもらったんだぁ」
無事に場所取りができて満足そうな梨里愛。
確かに木があって一見見えにくそうな場所だけど、ちょうど花火の打ち上がる方向は木々がなく開けていて見やすそうだ。
「花火楽しみだねっ」
「んー」
俺は花火なんか見ないで早く帰りたいけど。
「あっ、ねーねー!一緒に写真撮ろ?」
「は?やだ、面倒くさい」
「そんなこと言わないでよぉ、隣にいるだけでいいから!ねっ?」
「……はぁ」
さっきからため息しかでない。
俺が嫌がっているのを梨里愛はわかんないのか?
自分でも普段から素っ気なくぶっきらぼうだと思っているくらいのなのに、さらに不機嫌になっている俺に他人が気がつかないはずがない。
わかっていながら俺を連れ回すのはなんの意図があるんだよ。