ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
「団長が、旗を投げ出しちゃったの見て怒ってたよ」
「げ」
「グラウンド探し回ってる」
「……、さんきゅ。俺、ちょっと行ってくる」
苦虫を噛み潰したような顔をした康晴は、おずおずと立ち上がった。
「団長、顔怖ぇーんだよな……」とこぼしながら、小走りでドアに向かって行く姿を、申し訳ない気持ちで見送った。
……大丈夫かな。
白組団長の、ガタイのいい3年生を頭に思い浮かべる。
仕事を中断させたのは、わたしなのに。
……うちの応援団って、結構力入れてるし、こってり絞られちゃったらどうしよう……。
「ちょっと、愛花」
康晴の行く末に想いを馳せていると、美月にバシバシと肩を叩かれる。