ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
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ピンポン、というチャイムの音が聞こえた気がして、わたしは目を覚ました。
わたし、寝ちゃってた……?
うーん、と目をこすりながらゆっくり体を起こして、時間を確認する。
おーちゃんが出かけてから、30分ほどしか経っていなかった。
なんだ……と体から力が抜けて、再び目を閉じそうになると、またピンポン、と鳴った。
——あれ。
チャイムの音が鳴ったのは確かだけれど、少しの違和感。
なんだか、音が遠い気がする……。
寝ぼけた思考でそこまで考えて、わたしはああ、と納得した。
——隣の家のチャイムだ。
そうか、隣……。
ん……? 隣?
今度こそ、わたしはしっかりと飛び起きた。
この部屋の隣は304号室——わたしの家……!