ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
わたしは少し遅れて、今日の学校の予定が、授業ではなく体育祭の片付けだけだったことを思い出した。
「あ……ありがとう」
「いや。……足、大丈夫か」
「……うん……」
「……それは、よかった」
「……」
「……もしかして俺、お前の家、……間違えた?」
小さく首を振ると、「だよな」と小さな声が返ってくる。
康晴の視線が、ゆっくりと、わたしのすぐそばにあるネームプレートに移された。
「——『樫葉』って、誰?」