ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


「興味ないから」

「……でたよ」


はああ、と盛大にため息をついた萩原は、やだやだ、と頭に手を当てる。


「そのセリフ、もう聞き飽きたって。なんなの? 誰になら興味示すの?」

「お前」

「……」

「赤くなるなよ。冗談だばか」


近くにあったファイルで、パコンッ、と萩原の頭をはたいた。

「いてっ」と小さな鳴き声が返ってくる。


「びっくりしたあ。俺、今初めて男にときめいた」

「ときめくな」

「だってお前、モテるのに全く女の影見せないじゃん。うすうす、ちょっとソッチの気があるのかなーと……」


俺はもう一度、目の前の頭にファイルを振り下ろした。
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