ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
「デタラメ言うな」
ぐいぐいとくっついてくる体を押し返して、引き剥がそうとした。
なかなか離れない萩原。
……力強いな、おい。
「なんだよ、ほとんど間違ってないだろ。高校以来彼女いないくせに」
「……」
「そうなの?」
杉本さんが目を丸くする。
「そうらしいんすよー。機会はいくらでもあるのに、いつも興味ないの一点張りで。ほんとに男か? って感じですよね」
……こいつ……。
本人を置きざりにして、ベラベラと話しだす萩原をジトリと見る。
脇腹を思い切り肘で突いてやると、ぐふっ、と苦しげな声をもらしながら離れていった。