ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
——相手にするな。
あっちは高校生だ。
落ち着け……俺。
大人の余裕なんてちっとも感じられない自分の心に、情けなくなる。
こんなことで、……俺の気持ちを優先して、結花の守ってきたものを、台無しにするわけにはいかない。
あいつが目を覚ますまでは、……俺が、愛花の保護者代わりなんだよ。
「……おーちゃんってばっ」
追いかけて来た声に、ハッとする。
……やべ。
置いて来てた。
「歩くの早いよ」
隣に並んで息を整えている愛花に、俺は眉を下げた。
平静を保つために、周りが見えなくなっていたらしい。
我ながら、ガキみたいでカッコ悪い。
「さっきのあいつ、彼氏?」