ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


「偉いな、お前」

「……え」

「すごいよ」


切実に告げると、愛花は照れたようにはにかんだ。


「わたしがここを引っ越したくないって言ったせいで、お姉ちゃんには大変な思いをさせちゃってるし……」


愛花は「それに」と続けて、


「せっかくおーちゃんと出会えたから、これからも、ここに住みたいの。そのために、できるだけ負担をかけたくない」

「……」

「1校に絞るのは、……ほんとはちょっと、不安だけど。……おーちゃんが協力してくれてるから、なんでもできる気がする」


ふにゃりと笑顔を向けられて、俺は再び打ちのめされた。
< 199 / 405 >

この作品をシェア

pagetop