ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
……やばい。
ものすごく嬉しい。
これまでお節介だと思いながらも、ふたりの力になりたくて、放っておくことはできなかった。
それは、もうほとんど自己満足のようなものだった。
けど、……こんな風に、思ってもらえるなんて。
胸の奥が熱く泡出つのを噛み締めながら、再びノートに向き合った愛花を見守っていると、視界の端で、カーテンの向こうが白く光ったように見えた。
間を置かずに、空を裂くような音が落ちる。
「きゃっ」という小さな悲鳴と、不意にテーブルの上に乗せていた左手が掴まれる感覚に、俺まで肩を揺らしてしまった。
伺うように愛花を見ると、握られた手が、ぱっと離される。
「……えと、ちょっとびっくりしただけ……」
雷に驚いてしまったことが恥ずかしかったのか、具合悪げに下を向いた愛花に、思わず笑みがこぼれた。