ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
……カッコいいと思ったけど、前言撤回。
繋がった俺の手を意識して身を縮こまらせている愛花は、とても可愛らしかった。
——参ったな。
左手の温もりに、意識が集中する。
まだまだ子どもだと思っているはずの相手に、忙しなくなる心臓の動き。
……年下が好みだったっけ、俺……。
いや、そんなはずは……。
予想外の自分の反応に頭を抱えたくなりながら、窓の外へと視線を移す。
雷が鳴るたびに、愛花の手に力がこもるのを感じて、心が震えた。
——守って、やりたいな。
俺にできることがあるなら、……なんでもしてやりたい。
雨粒が断続的に窓ガラスを叩き、水滴を流していく。
それらを白く見せる稲光が、もう少し続けばいいと、……このとき俺は密かに、そう願ってしまった。