ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
「……でも、あのお姉さん、わたしのこと彼女だって思っちゃったかもしれないよ」
すっかり落ち込んでしまった気持ちを悟られないように、わたしはなんとか話を続けた。
「だろうな」
「い、いいの?」
あっけらかんとして言うおーちゃんに、わたしは戸惑いを隠せない。
妹だ、って言ったばっかりなのに。
「……よくない」
「へ?」
「やっぱよくないな。秩序が乱れる」
うんうん、となにやらひとりで納得しているおーちゃんに、わたしは本日2度目のショックを受けた。
「ちゃんと妹だって説明しておくよ」
「……でも、そうしたらあのお姉さん、今度こそ彼女に立候補するんじゃ……」
わたしがそう言い終わる前に、おーちゃんはとうとう耐えられない、というように吹き出した。
「お前なあ……」
そこまで言いかけて、また笑い出して、言葉を続けられない様子だった。
ヒー、ヒー、と肩を震わせている。
「……」
……なにがそんなに面白いんだろう。
訝しげに眉を寄せていると、おーちゃんは無邪気な笑顔を見せて、
「お前はほんっと、俺のこと大好きな」