ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
「……わかった。それなら、もしかして妹ちゃん?」
「……」
……なんで突然、鋭くなるかな。
稀に見る萩原の勘のよさを、俺は否定することをしなかった。
「ごめん。……妹っていうのも、嘘。本当は知り合いから預かってる子で、そう思っといたほうが、色々と都合がよかったから」
「なるほど……」
萩原は、はああ、とこめかみのあたりを指でほぐしながら、テーブルに肘をつく。
「杉本さんは、その子に会っちゃったから、諦めようとしてるわけね……。妹じゃないって、わかってたのか」
「……わざと会わせたんだ。……悪いことしたと思ってる。杉本さんの気持ちを、軽く見るような……」
「いや、……杉本さんもそう思われるような距離の詰め方したんだから、しょうがないよ。……あの人も、意外と小心者だよなあ……飲みの場で背中を押しちゃった俺も、俺だけど……」
と、乾いた笑顔を浮かべた萩原だったが、すぐに訝しげに眉をひそめた。
「……でも、妹じゃないなら、なんで人に言えないわけ? 知り合いの子を好きになったって、別にいいじゃん」
痛いところを突かれて、俺は渋い顔をする。
……ところが、ここまできて、誤魔化すという選択は残っていなかった。
「……歳が、結構離れてるから」
「いくつ?」
「7つ」
「……なな……」
萩原は険しい顔をして指折り数えると、「JKじゃん……」と呟いた。