ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
「なんて羨まし……じゃなくて。お前、いくら年下が好みだからって、……女子高生は、エロいって……」
……なにが?
いったいどんなことを想像したのか、萩原は緊張感のない顔つきで、鼻の下を伸ばした。
「その、好みがどうだとかって、お前が勝手に言ってるだけだろ。違うから……おい、そのだらしない顔、今すぐやめろ」
俺は緩みきった萩原の顔に手を伸ばして、鼻をむぎゅっとつまんだ。
いだだだっ、と向かいから声が上がる。
「……好みだとか、そういう問題じゃないんだよ。俺だってこんな感情抱くつもり、全くなかったし」
「じゃあ、だいぶ前からって……大学時代に彼女できなかったのは、……そういうこと?」
「自覚したのは2年前くらいだけど……、それ以前も誰かとどうにかなる気が起きなかったっていうか……まあつまり、そういうことなんだろ」
他人事のように言うと、萩原は何も言わなかった。
呆けた顔で、こちらを見ている。
「……お前、……頬を染めるな」
ぺちっ、と目の前のおでこを叩いた。