ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-

「お迎えって、あれ?」

「え?」


美月の指の先を視線で辿ると、なにやら門の近くが賑わっている。

できている人だかりは、みんなが女の子で——。

その中心の人物を見つけて、わたしはつい足を止めてしまった。


門柱に寄りかかるようにして立っていたのは、会社からそのままやってきたのだろうスーツ姿のおーちゃんだった。

周りの女の子の視線をこれでもかというほど集めているというのに、気がついていないのか、涼しげな瞳を真っ直ぐ手元の携帯に落としている。

スラリとした長身が大人びた雰囲気を際立たせていて、……鞄を持ったほうの手には、一緒に可愛らしい花束が抱えられていた。


——えっと。

ものすっごく、目立ってる……。
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