ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


「なに、あの人。……愛花、お前の知り合い?」


訝しげな康晴が、そうわたしに尋ねたとき。

携帯を見下ろしていたおーちゃんの瞳が、ぱっとこちらに向けられた。

視線がぶつかった瞬間、わたしの心が小さく震える。

わたしを見つけたおーちゃんはふ、と目を細めて微笑むと、


「愛花」


片手を上げてそう呼んだ。

同時に近くにいた女の子たちも一斉に振り返った。

あまりの迫力にわたしは思わず、じり……、と後ずさる。


「お前の知り合い、なんだな」

「う、うん」


康晴もきっと同じで、女の子たちに気圧されてしまったに違いない。

戸惑ったように確認されて、今度こそわたしは頷いた。
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