ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-

ずっと、嘘をついていたこと。

康晴の優しさに、甘えていたこと。

たくさん傷つける結果になってしまったこと。


「確かに、あんなことになって……怖くて、悲しかったけど……それでもやっぱり、悪いのはわたしだと思うから。……ごめんなさい」

「……なに言ってんだよ……」

「康晴とちゃんと、仲直りがしたい。まだ、友達として——」


わたしがそこまで言うと、康晴はそれを遮るように、自嘲じみた笑いをもらした。

視線を向けると、その表情には、諦めの色が浮かんで見えた。


「……なるほどね。あんなことしても、俺はまだ、友達の域から脱せなかったわけだ」


呟くように言われて、わたしは返事を迷ってしまった。

少しの沈黙のあと、康晴がおもむろに立ち上がる。

まっすぐな眼差しが、わたしを見下ろした。

……そして、そのまま、ゆっくりと腰を折った。