夜には約束のキスをして
とはいえ、和真としては、深青の力を補わないままに一晩を過ごすほうが、心配で心が休まらないというのが正直なところだ。彼女のもとを訪れないという選択肢は考えられなかった。
和真は今だ湿り気を帯びた髪をつまみ上げる。外出すれば、ほぼ間違いなくまた濡れるだろう。夜遅くなればさらに雨風は強まるということだし、今は髪を乾かすよりもさっさと深青に会いに行くべきなのかもしれない。和真は立ち上がった。
「母さん」
「ん? なに?」
「天気がマシなうちに深青のとこ行ってくるから、先にご飯食べてて」
毎日の習慣を、今日は少し早めに済ましてくる。そんな程度の報告のつもりが、それを聞いた母は盛大に呆れた顔になった。
「なにいってるの和真……さすがに、今日はやめておきなさい。さっきびしょ濡れになって帰ってきたところでしょう。また出かけたら、深青ちゃんじゃなくて、あなたが熱を出してしまうわ」
「いや、でも……」
「だめよ。川も増水しているだろうし、風でなにか危ないものが飛んでくることもあるのよ? このあたりは古い家が多いから……飛んできた瓦に当たったりしたら、熱出すだけじゃ済まないわ」
そこまで言われれば、さすがに強引に飛び出していくこともできない。しぶしぶ頷きつつも、和真の脳裏に浮かぶのは、以前たびたび微熱を出していた深青の姿だった。
小学校を卒業するあたりまでは、一日に一度の補給では足りなくて、夜に会いに行くと微熱で頬を熱くしていた深青。今では久しくそのような姿を見ていないが、果たして一晩欠かしてしまっても、彼女は平気でいられるのだろうか。
和真は今だ湿り気を帯びた髪をつまみ上げる。外出すれば、ほぼ間違いなくまた濡れるだろう。夜遅くなればさらに雨風は強まるということだし、今は髪を乾かすよりもさっさと深青に会いに行くべきなのかもしれない。和真は立ち上がった。
「母さん」
「ん? なに?」
「天気がマシなうちに深青のとこ行ってくるから、先にご飯食べてて」
毎日の習慣を、今日は少し早めに済ましてくる。そんな程度の報告のつもりが、それを聞いた母は盛大に呆れた顔になった。
「なにいってるの和真……さすがに、今日はやめておきなさい。さっきびしょ濡れになって帰ってきたところでしょう。また出かけたら、深青ちゃんじゃなくて、あなたが熱を出してしまうわ」
「いや、でも……」
「だめよ。川も増水しているだろうし、風でなにか危ないものが飛んでくることもあるのよ? このあたりは古い家が多いから……飛んできた瓦に当たったりしたら、熱出すだけじゃ済まないわ」
そこまで言われれば、さすがに強引に飛び出していくこともできない。しぶしぶ頷きつつも、和真の脳裏に浮かぶのは、以前たびたび微熱を出していた深青の姿だった。
小学校を卒業するあたりまでは、一日に一度の補給では足りなくて、夜に会いに行くと微熱で頬を熱くしていた深青。今では久しくそのような姿を見ていないが、果たして一晩欠かしてしまっても、彼女は平気でいられるのだろうか。