夜には約束のキスをして


 結論から言ってしまえば、和真は翌日も深青に会うことがかなわなかった。前線による大雨に続いて、里は台風本体の直撃を受け、学校は休校となり、母から外出の許可が降りなかったのだ。
 これには和真もかなり抵抗した。しかし、風雨は弱まる様子など微塵も見せないうえに、和真自身も前日雨に打たれたせいか、咳をしていたということがあった。とてもではないが母が頷くはずもなかった。
 深青と顔を合わせないままに迎えた二晩目は、和真の神経をおおいに削った。一応電話で様子を確認してはみたのだが、直接会わなければ多少の不調はごまかせてしまうのだから安心はできない。電話口に出られる程度の元気があることだけはわかったが、この夜の間にも体調が急変するのではないかと気が気でない。ベッドのシーツにくるまりながら、ひたすら夜が明けるのを待ちわびた和真は、ついに一睡もできずに翌朝の朝日を見た。
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