夜には約束のキスをして
「ん? 和真? もう来ていたのか。おはよう。今朝は早いな」

 現れたのは、常と変わらぬ凛としたたたずまいの深青だった。背筋はぴしりと伸びているし、目元にも活力が宿っていて、見るからに快調そうである。和真はわが目を疑った。

「深青……なんで……」
「? どうした?」

 唖然としている様子の和真が心底不思議なのか、深青は首を傾げる。

「昨日も、一昨日も、力を補ってないのに……なんでそんなにいつもどおりなんだ」

 呆気にとられつつも、和真にとっては当然すぎる疑問を投げかけると、深青の頬がさっと薔薇色に染まった。

「あ、それは……その……」

 先ほどまでのはきはきとした態度からうってかわって、深青はなにやら言いづらそうに視線を右往左往させる。
 深青のその反応を、和真は呆然と見つめた。まさかという直感が、和真の脳裏を駆け抜けた。
 まさか深青は、和真以外の誰かに、力の補給を頼ったのでは……。
 思い至ると、もうそうだとしか思えなかった。そうでなければ、和真と二日も離れていて、深青が平気でいられるわけがない。
 タイミングよくと言うべきか和真のひらめきを裏付けるように、深青に続いて屋敷から出てきた文也が門扉の陰から顔を出した。ごく自然に深青の隣に並ぶ。
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