夜には約束のキスをして
こわばった表情を不審に思った深青が、和真の瞳を探るようにのぞき込む。見られたくない――咄嗟にそう思った。
「悪い、今朝急いでやることあったの思い出した。先行く」
ようやっと絞り出した声は、自分でも驚くほど無感情に淡々としたものだった。
「え? 和真?」
寄り道してまで深青を迎えに来ておきながら先に行くなどという不可解な展開に、深青が戸惑う気配が伝わってきたが、かまわず和真は背を向けた。勘違いで慢心していた恥ずかしさを自覚して、平然と深青と文也の前に立っていられるほど、和真は図太くなかった。
振り切るように駆け出したまま、学校にたどり着くまで、和真は一度も振り返ることができなかった。
「悪い、今朝急いでやることあったの思い出した。先行く」
ようやっと絞り出した声は、自分でも驚くほど無感情に淡々としたものだった。
「え? 和真?」
寄り道してまで深青を迎えに来ておきながら先に行くなどという不可解な展開に、深青が戸惑う気配が伝わってきたが、かまわず和真は背を向けた。勘違いで慢心していた恥ずかしさを自覚して、平然と深青と文也の前に立っていられるほど、和真は図太くなかった。
振り切るように駆け出したまま、学校にたどり着くまで、和真は一度も振り返ることができなかった。