夜には約束のキスをして
そんな夜更けに一体なにが起こるというのか。和真の表情を読み取った文也が、らしくない真剣な目で和真を射抜く。
「お嬢様が、倒れました」
「――っ」
告げられた内容に衝撃を受けて、瞬間的に息が詰まった。
「どうして……」
和真の脳裏にはいくつもの疑念が湧く。深青が倒れたのは力が不足したせいか。深青は他の男に力の補給を頼ったのではなかったのか。昨日、平気になったと言っていたのはどういうことだったのか。いやそんな――ささいな疑惑よりなによりも。幼い日、苦しげに床に伏していた深青のか弱い姿が鮮明によみがえる。あのときの苦しみをまた深青は味わっているのか。
「どうしてって聞きたいのはこっちですよ」
和真の動揺に文也の台詞が割り込んだ。
「台風で二日あいたとはいえ、昨晩は和真先輩、お嬢様のところに来ていたはずですよね? なのに、どうしてその直後にお嬢様が倒れるんですか?」
その問いは、和真の胸を鋭く刺した。深青のそばにいながら、昨日の和真は口付けを拒んだ、身勝手な理由で。己が招いた事態かもしれないと思うと、自分を殴りたくなった。だが今はそんなことをしている場合ではない。
「…………深青のところに、行かせてくれ…………」
絞り出すように言うと、文也は小さく息をついて頷く。
「はなからそのつもりですよ」