結婚から始めましょう。〜SIDE 蓮〜
「高橋桃香さんですか?」

緊張を押し殺して、平静を装って声をかけると、彼女は驚いた顔をした。
無理もない。ここへ入るだけで精一杯な様子だったから。まだ自分と顔を合わせる心の準備までは至ってなかったのだろう。
慌てる様子も可愛らしくて、思わず笑いを漏らしてしまった。それを彼女が不快に思った様子はなく、ホッとした。

恥ずかしがっているのか、彼女はあまりこちらを見ようとしない。南田と対面していた時の、あの余裕そうな素振りは一切ない。おそらく、仕事とそうでない時の違いなのだろう。


しかし意を決したのか、途中から姿勢が変わった。
〝なぜ自分なのか〟〝他の女性でも〟と、正直な思いを話し始めた。

やはり、こちらの立場を気にして断ろうとする様子が伝わってくる。


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