結婚から始めましょう。〜SIDE 蓮〜
「桃香、おいで」

音もなく現れた夫に、桃香は驚いていた。
無理もない。失礼を承知で、こっそり入室したのだ。
こうでもしないと、彼女は不安を隠してしまいがちだ。それでもずい分見せてくれるようにはなったけれど。

広げた腕の中に、そろりそろりと慎重に向かってくる桃香。
ようやくたどり着いた時、ふんわりと抱きしめた。

「綺麗だよ、桃香」

「ありがとう。蓮さんも、すごく素敵」

この腕の中にある宝物は、これから先、何があろうとも守り抜いてみせる。

彼女は幸せな気持ちを教えてくれた。
それだけでなく、切なさも愛しいと思う気持ちも。


秋葉家の親族間のわだかまりがなくなったのも、彼女の存在のおかげだ。

今日、この場へ足を運んでくれた親族は、もう決して仕事の一つだとは捉えていない。
祖父や従兄弟夫婦をはじめ、皆がこの結婚を心から祝福してくれている。

父と母を、肩身の狭い思いをさせることなく、堂々と座らせてあげることもできた。




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