Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
「そうですよ、会長。言わずに我慢するの、大変だったんですから。エリカには怖い顔されるし」

「あの……事情がさっぱり分からないのですが。いったい、どういうことなんでしょう」
 わたしは喜一郎氏に尋ねた。

「すまんすまん。だが勿体つけたほうが喜びも大きくなったんじゃないか、なあ、壱子さん」

「会長、わたしはまだ納得したわけでは……」
 叔父さんが横から口をはさんだ。

「ああ、うるさいよ、お前は。このふたりが結婚したところで、べつにお前さんの不利益にはならんだろう」

「それはそうですが、なにぶん、世間体というものが」

「家柄のことか」
「ええ。芹澤に迎えるとなれば、それ相応の……」

「それならまったく問題ない。彼女は武家華族の血を引く女性だ。元を正せば百姓の芹澤よりもよっぽどきちんとした出自だ」

「はっ? 華族……?」
 叔父さんは虚をつかれて二の句が継げなかった。
「えっ、そうなんですか?」
 わたし自身も初めて聞く話だった。

「あの、その辺りの事情を、わたくしから説明させていただいてもよろしいですか」

 湊さんが遠慮がちに声を挟むと、喜一郎氏は頷いて、話を促した。

「田中壱子さんの曾祖母に当たられる方が、尾張徳川家の御血筋でして。会長はその方の家が没落され、戦後、〝蝶吉〟という名で芸者をされていたときにお知り合いになられました」
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