転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)
「は、はい。危ないところをお助けくださいましてありがとうございます。あの……」

レミリアが戸惑っているのは、気軽な口調で話しかけられたためであろう。

レミリアもエマも彼が誰なのか知らないが、相手は知人と思っていそうな口ぶりである。

けれども、相手もなにかおかしいと気づいたようで、顎に拳を添えて首を傾げた。

「昨年の舞踏会でお会いした時と雰囲気が違うな。モリンズ伯爵家のシンシア嬢……だよね?」

途端にレミリアの眼差しが冷え、声のトーンも低くなる。

「わたくしはシンシアの妹、レミリア・ルシア・モリンズです」

「これは失礼。君たちは双子だったね。よく似た顔立ちだ。私は王太子、クリストファー・チェスタ・アリンガムだ」

その名を聞いた瞬間、エマは頭をハンマーでぶん殴られたような大きな衝撃を味わった。

(乙女ゲーム『王宮ファンタジー・ブルーローズ伝』に出てくる王太子の名前と一緒。この記憶は一体……!?)

目を見開いてフリーズするエマの頭に、走馬灯のような映像が流れる。

* * *

佐野恵麻(さのえま)、それが彼女の前世の名前だ。

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