転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)
「あ……はい。いかがわしいことを言われ、腕を引っ張られましたけど、まだ危害は加えられていません」
騎士団は王族の護衛と王都の治安維持を任務としている。
チンピラを許したくないような鋭い視線を向けているが、未遂の者までしょっ引いていては、城内の地下牢が犯罪者で溢れてしまうことだろう。
「今日のところは許してやるが、次はないぞ」
鞘から数センチ抜いた刃を見せつけられたチンピラたちは、震えあがった。
「すみませんでした!」と謝り、こけつまろびつしながら逃げ去った。
レミリアとエマはホッと息をつき、顔を見合わせる。
助けてくれた竜騎士にお礼を言おうとしたら、すぐ近くに止められていた馬車の扉が開いて、貴族の装いをした青年がひとり、下りてきた。
敬礼の姿勢を取った竜騎士の前に進み出て、彼はレミリアと向かい合う。
サラサラとした亜麻色の短い髪に夏空のように青く涼しげな瞳の、ハッと目の覚めるような美形だ。
(一挙手一投足、呼吸さえも気品が滲み出ている。この方は、もしや……)
「女性が絡まれているのが見えて、竜騎士を走らせたんだ。君だったとは驚いた。怪我はない?」