転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです（汗）

こんな自分では妹の評価を下げてしまうと気にした恵麻が、外では他人のふりをしていたため、同じ高校に通っていても双子だと知っている友人はほんの一握りだ。

早送りのように流れた前世の記憶は、ある場面でゆっくりと再生される。

それは高校三年生の二学期。

卒業後の進路について、家族と相談していた時のことだ。

夕食後の食卓テーブルを家族四人で囲み、父が申し訳なさそうに言う。

「実は父さんの会社が経営難で、ボーナスが全額カットされることになったんだ。おそらく月給も減らされるだろう。大学の授業料の支払いが厳しい。ひとり分ならなんとか工面できるが、ふたりとも進学したいのなら、奨学金を借りてくれ」

双子の顔が曇る。

ふたりとも進学希望で、受験勉強を頑張っている最中であったからだ。

「奨学金って返さなきゃいけないんだよね？　就職してからの返済が大変だと聞いたことある」

由奈が心底困ったような顔をして、隣の姉をチラリと見た。

それを受けて、恵麻は考え込む。

（私ひとりのことなら、奨学金を借りて大学に行きたいと言えるけど、由奈にもそれを求めるのは可哀想……）

由奈は優しい子だ。