転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです（汗）

（ヒロインがひねくれ者のレミリア様に変わってのブルロズの世界ということなの？　そんなの攻略不可能じゃない。本人は引きこもって他貴族と交流したがらないし、性格に難がある。誰も求婚してくれないよ）

そう思った直後に頭がオーバーヒートし、混乱を極める。

（待って。私は一体、なにに驚いたり焦ったりしているのよ。前世？　乙女ゲーム？　なんて非現実的な。頭がおかしくなったのかも……）

これまで十八年間、なんの疑いもなくこの世界で生きてきたエマにとって、受け止めきれない衝撃である。

脳内でボンと風船が破裂したような音が響いた後は、気を失い、古書店の店先で倒れてしまった――。


目覚めると清潔なベッドに寝かされていた。

周囲は明るく、夕暮れ前のようだ。

おそらく気を失っていたのは、二時間ほどのことだろう。

白い布を張ったついたてが左右に置かれ、ベッドサイドにはレミリアが心配そうな顔で椅子に座っている。

「エマ、気づいたの？　気分はどう？」

「ずいぶんとよくなりました。レミリア様、ここはどこでしょう？」