転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)
「私のような者にまで手を差し伸べてくださる王太子殿下のお優しさに、深く感謝いたしております。この度はご迷惑をおかけして、誠に申し訳ございませんでした」

王太子は頷いてくれて、それから指先ひとつ動かし、後ろに控えている竜騎士を隣に並ばせた。

「君たちに絡んでいた男を追い払ったのも、倒れた侍女殿をここへ運んだのも、彼がしてくれたことだ。お礼なら竜騎士団長のダグラス・マディソンに言ってくれ」

「はい。竜騎士団長様、ありがとうございました。お手を煩わせてしまい申し訳ございません」

頭を下げて感謝を示しつつ、エマはハッとしていた。

チョコレートブラウンの髪に黒い瞳、逞しくしなやかな筋肉が騎士服の上からでもわかるような肉体美。

美麗かつ精悍な顔立ちをしている二十八歳の若き竜騎士団長、ダグラス・マディソン。

その名もブルロズに登場する攻略対象キャラのひとりであったからだ。

「王都の民を守ることは我らの使命です。お詫びもお礼も不要。侍女殿が回復されてなによりです」

低く艶めいた声を聞かせてくれた彼にも、エマの胸はときめく。

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