転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです（汗）

（男性貴族と交流したがらないくせに、意外と恋愛ものがお好きなのよね。恋や結婚に興味がないわけではないと思うんだけど……）

エマも恋愛とは縁遠い生活を送っているが、そういう類の読み物自体は好きである。

そのため、実生活は引きこもりでも、本のヒロインに感情移入して恋愛を楽しめるというレミリアの気持ちは理解できた。

けれども侍女としては、仕える令嬢をこのままにしておけないと思うのだ。

「エマ、お支払いをして」

大事そうに本を抱えたレミリアに命じられ、エマは財布から銀貨を出して店主に渡す。

そうしながら、レミリアについ小言を言ってしまう。

「一気に読もうとしないでくださいね。読書以外の時間も大切になさってください」

「エマったら、お母様と同じことを言うのね。シンシアの結婚が決まってから、前にも増して、みんなが口うるさいわ」

「レミリア様を心配しているのです。このままだと行かず後家になっちゃいますよ」

「そんなに結婚したいなら、エマがすればいいじゃない。あなただって貴族の娘でしょう？」

痛いところを突かれて、エマは「うっ」と呻いた。

エマの父は、サノーマン男爵という。