平凡な私の獣騎士団もふもふライフ2
頬を紅潮させ、もごもごと彼の言葉が口の中に消えていく。

獣騎士の一人が気を利かせて、その手紙とセットにされていた小箱を持った。代表のごとく彼がジェドのところへ報告に向かうのを、リズ達は目で追う。

「団長、媚薬入りの菓子のブレゼントがきてます」

彼から報告を受けた直後、ジェドの拳が、ガンッと書斎机に落ちた。

初心なリズは、媚薬と聞いて頬を染めてしまった。ここは男だらけの職場なのだ。そういう話題だって当然あるのだろうと、今更のように気づく。

コーマックが慌てて見せないようにした手紙には、恐らく男性たちが交わすような夜のことでも書いてあったのだろう。

思えばジェドも、二十八歳の健全な大人の男性なのだ。まだ恋人もいない身であるから、他の男性と同様に事情も色々とあるのだろう。

一人だけ恥じている状況もいたたまれなくなって、リズは唇をきゅっとして目を伏せた。

そんなリズの内面の動きを察知したらしい。コーマックがフォローの言葉も追いつかない中、ジェドが完全否定するがごとく部下を睨み返して怒鳴った。

「俺には不要だ! そんなものを贈ってきたのは一体誰だっ!」

「ニコラス殿下です」

「くそっ、またあいつか!」

ジェドが、もう一度、忌々しげに机に拳の横を叩き付ける。

どうやら知り合いであるらしい。けれどリズは、頭理中で『殿下』という単語を繰り返し、ごくりと緊張で唾を飲んだ。

「あの、ニコラス殿下って……?」
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