平凡な私の獣騎士団もふもふライフ2
◆§◆§◆



「お久しぶりです、ジェド団長」

執務室の応接席に案内されてすぐ、ソファに腰を下ろすなりそう声をかけたのは、上品な深い紺色の騎士服に身を包んだ一人の男だった。

――元獣騎士候補、エドモンド・ワイナー。

現在、第一王子ニコラスの専属の護衛騎士その人である。美丈夫だが武骨な印象が少々強めで、黙って座っていると逞しい一人の軍人に見える。

その向かい側のソファには、黒いオーラをまとったジェドが座っていた。機嫌は最高潮に悪いようで、入室してから一言も発していない。

おかげで室内には、かなり重々しい空気が漂っていた。

「さすがエドモンドさん」

「思ったら即行動なとこ、相変わらずだよな」

案内に同行した獣騎士たちが、控えている扉側の方でこそこそと囁き合う。

唐突な訪問はいつものことであるらしい。リズは、いちおう団長の直属として、副団長コーマックと並んでジェドのソファの後ろに立っていた。

エドモンドは、このウェルキンス王国の現在唯一の王子、ニコラスのお目付け役兼護衛を担当している専属の護衛騎士である。

凛々しい端整な顔立ち、ぴしりと伸ばされた背。膝の上に置かれた指先にまで品を感じるのは、彼がワイナー伯爵家の三男という生い立ちもあるだろう。

軍の教育機関の中でも、エリート中のエリート学校に進学。けれど苦手分野があって、その極秘部隊軍とやらには入隊しなかった人だ。

――そして巡り巡って、現在、第一王子専属の護衛騎士。

実際に目の当たりにしたエドモンドは、手紙の印象がまるでないイケメン軍人だった。これであの可愛い丸文字を書き、町の女の子みたいな喋り文章を書いたとは思えない。

その時、彼の目がリズへ向いた。
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