平凡な私の獣騎士団もふもふライフ2
「その必要はない。ニコラスの周りには、十分な護衛部隊だっている。何かあれば、陛下から直に俺に要請がくるはずだろう」

テーブルの横で足を止めたジェドが、じろりと見やって一蹴する。

だがエドモンドは、引く気はないらしい。同じく立ち上がると、ジェドへ面と向かってこう言った。

「急な訪問だったのは認めます。他にご予定が入っているから今は話を聞く気になれない、というのなら、次に話しができる機会をここで待ちます」

「あ?」

ジェドが秀麗な眉を寄せ、完全な素の表情で嫌悪感たっぷりに低い声を上げる。

引き受けてくれるまで説得するつもりなのだろう。断られたというのにエドモンドは堂々としていて、リズはコーマックたちと共に見ているしかない。

「お前は、うちの白獣が受け入れた元獣騎士候補とはいえ、非所属の軍人だ。何もないとは限らん」

ジェドが、エドモンドの胸を指先でつつきながら苛立った声で告げる。

「第一王子殿下の、唯一の専属騎士に何かあったとしたら、問題になる。お前につきっきりで構っていられるほど、獣騎士団に余裕のある人数はない」

「私は、あなた様を説得する覚悟で、殿下に相談してお時間を頂いてきました。陛下にも『伯爵の様子をみてきて』と言われまして、ついでにお土産リストも持たされました。この二つの使命を果たすまで帰れません」

「王宮は一体どうなってんだよ。陛下も、相変わらずだな」

律儀にも『お土産リスト』を掲げたエドモンドに対して、ジェドが陛下にも見せられない顔でギリィッと苛々感を出す。

なんだか珍しい感じの団長である。リズは、次々に交わされるそのやりとりを、ぽかんと見ていた。コーマックが額を押さえて「陛下……」と呻いている。
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