平凡な私の獣騎士団もふもふライフ2
そのせいで、この優しい理想の上司なコーマックは、「イケメン」「いい地位」「二十八歳の適齢期」なのに、恋人候補の一人だっていないのだ。

「うっ、なんて不憫なの副団長様。デートする女性もいなくて、鬼上司な団長様の仕事に日々忙殺されているだなんてっ」

想像したリズは、思わず涙ぐんだ。彼も年頃の男性だ。デートができる女性のパートナーは欲しいだろうと、村にいた青年たちを思い返し重ねる。

その隣にいるコーマックは、どういう状況なんだと笑顔も引き攣り気味だ。

「労っただけなのに、なぜそちらを同情されているんだろうか……」

部下達から同情の眼差しを受けながら、彼はジェドが、リズの泣きそうな顔をぎらついた目でガン見していることにも気づいて、目頭を押さえる。

「……リズさん、すみません、また声に出しています。それから心配は無用ですから、どうか泣かないでください」

それから仕分け作業が再開された。

ジェドに確認が必要な内容かどうか、急ぎのものであるのかどうか。書面に目を通してコーマックが確認していく。

その隣でリズも、せっせと手紙の開封作業に集中した。中に入っている便箋を傷付けてしまわないよう気をつける。今日までに数をこなしているおかげで、手際は良くなってもいた。

ようやく無事、獣騎士団の団長が相棒獣を得た。

それは、長年かかって達成された〝願い〟でもあった。だから祝いの手紙と小さな品物が、毎日のように大量に届いているのだ。

それくらいに、ジェドが注目されている人であるがゆえだろう。そして誰もが、相棒獣が不在だった彼の身を思って、案じていたのだ。

軍人や貴族だけでなく、領民たちから届いた祝福の手紙もある。
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