ハッピーエンダー
「泊めてくれるって言うから行ったわけ。セックスしなきゃなんねぇだろうなとは思ってたけど。アイツさ、俺に飯出した後、下着姿になってさ。俺に背向けて化粧直し始めんの」
「は、はあ」
「下着って、あれだよ。スケスケのキャミソールみたいなのにさ、下はもう紐みたいなやつで。そこからケツが半分出てんの。もう、その景色がさ、俺の母親そっくりだったんだよ。ホストに会いに行く前に念入りに化粧してるときの。気持ち悪くてさ。マジで、本当に、カーペットにゲロ吐いてきた」
水樹さんは一方的に話し終え、お腹を抱えて笑いだした。もちろん私はまったく笑えず、唇をキュッと縛る。こんな噂は聞いたことがないから、彼はずっと内情を秘密にして、大学へ通っているのだろうか。
「……お母さんは、今日はどうしてるんですか」
終始笑っている彼の事情が気になって、わざとそう促した。彼の瞳から涙は決して出ないけど、なんだか、助けを求められているような気がしてしまって。