溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情
「あ、あの、まだ洗い物が」
「気にせず続けて」
これが気にしないでいられるはずがない。
「離していただけると助かるのですが」
「なら一緒に風呂に入るか?」
なぜその二択なのかと脳内でツッコミを入れつつ、首を横に振り、ぎこちない動きで洗い物を続けることにしたけど。
「やりにくいです」
「ハハ。そうだな」
そのまま吉池さんは離れてお風呂に入りに行ったけど、残された私の背中には吉池さんに抱き締められていた感覚が残っていて、離れてもドキドキする。
でも全然嫌じゃなかった。
むしろ呉服店では見られなかった笑顔や愛情に触れることができたことが嬉しくて、私の気持ちが荒むこともなかった。
そうか。
人目さえ気にならなければ私も素直に吉池さんと向き合えるのだ。
でも知り合いや会食の場が多い吉池さんと結婚したら今よりも確実に外に出る回数は増えるだろうし、その度に吉池さんと並んだ私を周りがどう見るのかを気にしてしまう。
なにかこの状況を打破出来るようなきっかけが起きない限り、私が高価な着物に袖を通すことは難しい……。