溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情
だってお見合い相手の名字は鈴木だと聞いていたし、吉池さんのご両親が離婚したという話も聞いていない。
「きみの見合い相手は俺だ」
断言されると私が聞き間違えたのかという錯覚さえ覚える。
でもラウンジでは『鈴木』で通ったし、兄からもらったメールにも鈴木姓が書かれていた。
「どういうことですか?」
疑いを抱きながら聞くと、吉池さんは口元を緩めた。
「そのしかめっ面。昔から変わらないな。悩んだり考えたりするときのクセだろう?美人が台無しの」
美人云々は別にして、さほど関わりのない吉池さんがどうして私の癖を知っているのか。
「記憶力良いんですね」
「きみよりは、な。それより」
吉池さんはそれだけ言うと、また椅子に座るよう促してきた。
「あ…ありがとうございます。でも私はこちらで」
上座には吉池さんに腰掛けてもらえるよう遠慮して、出入り口にいちばん近い下座の椅子に手を伸ばす。
高級なレザーチェアは触り心地も座り心地も抜群で、混乱し、動揺している気持ちが幾らか落ち着いた。
クラッチバッグを隣の椅子に置き、向かいに腰掛けた吉池さんの方を向く。
すると吉池さんもこちらを見ていて、真っ直ぐ射抜くような視線にドキッとさせられた。