溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情
「考える時間を頂けませんか?」
吉池さんの気持ちに誠意を持って答えを出したい。
にも関わらず考える時間は1分だと言う。
「そんな簡単に決められることじゃないですよ」
「下手の考えやすむに似たり」
それはつまり……
「私に拒否権はないのですか?」
「拒否権は当然ある。が、俺を嫌だと思わなければ拒否はしないで欲しい。頼む」
頭を下げられてしまった。
「どうしてそこまで」
思わず言葉が口から漏れた。
それを耳にし、顔を上げた吉池さんが私を真っ直ぐ見つめ言った。
「俺は中学の頃、きみが好きだった」
「それはちょっと信じられない話ですけど、仮にそうだとして10年近く経った今、関係ありますか?」
疑いの目を向けながら聞くも吉池さんは真面目な顔で大きくひとつ頷いた。
「10年経ってもきみをひと目見て心を奪われたんだ」
「直感、ですか」
つい数分前の話題を口にすると、また吉池さんは頷き、話を進める。
「中学の頃は俺のことを眼中にないきみを口説く自信がなかった。だが今は違う。2ヶ月で必ずきみを落としてみせる。とは言えそのチャンスをもらえないとどうにもならない」
それはその通りなのだろうと頷くと、吉池さんも頷き、続けた。
「気持ちの合意が取れるまでは手を出さない。きみが不快に感じることはしない。不自由も後悔もさせないから、俺にきみを口説く時間をくれ」