溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情
「信楽様でお間違いないですか?」
「あ、はい」
慌ててティーカップを置き、間違いないと頷くと、支配人は笑顔で頷いた。
「本日はご利用ありがとうございます。先方から場所の変更を承りました」
「え?」
私が間違えたのかと一瞬焦ったけど、どうやら違うようだ。
「ゆっくり静かな場でお話ししたいとのことで、別のお部屋をご用意させて頂きました。ご案内致します」
どうやら先方はこの場に来ていたらしい。
「分かりました」
静かな場で、と言われれば断る理由はなく、促されるまま立ち上がり、ミルクティーの伝票に手を伸ばす。
でも、それは私が取るより先に支配人の手に渡ってしまった。
先方が支払う旨を伝えているのかもしれないにしても、ポケットに入れる素早く無駄のない所作に、この支配人がいる限りホテルは安泰だな、などと関係ないことを思った。