溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情


「水島曰く、その着物はどんな場に出ても恥ずかしくない逸品だそうだ。長く着られるものの100万なら高くない。俺はそう判断したんだが、それでもやはり俺の金銭感覚はおかしいと思うか?」


吉池さんに聞かれて、小さく首を横に振る。


「良かった」


吉池さんはホッとしたように眉根を寄せて微笑んだ。

それを見て、慌てて口を開く。


「でもまだ覚悟は出来ていません。吉池さんの隣に堂々といられる覚悟が出来ていないのに袖を通すのはこの着物に失礼かと思うので、もう少し時間をくれませんか?」

「そうだな」


吉池さんは短くそう言うと柔らかく微笑んだ。


「幸いパーティーまでは時間がある。俺もまだきみを口説いていなかったし、覚悟を決めさせるには早かったよな。まあ、この着物をプレゼントすれば喜んでくれるかと思ったんだが」

「すみません」


苦笑いの吉池さんに頭を下げて謝ると、頭にポンと手が乗った。


「謝らなくていい。今日はきみの堅実的な考え方に信頼を覚えたよ。あと、和服姿に艶っぽさを見た」


甘く、低い声が鼓動を加速させる。

視線を上げたくても気恥ずかしくて上げられない。

なんて答えたらいいのかも分からなくて固まっていると、水島さんが姿を現した。


「そろそろ結論、出たかな?」


水島さんの問いかけに吉池さんが私の頭から手を退け、答える。


「悪い。一度、キャンセルさせてもらっていいか?」


吉池さんの回答に水島さんが驚いたように目を見開いた。

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