溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情
「いやいや、気にしなくていいから。きっと絵麻ちゃんはこの着物に袖を通すことになるんだからさ」
「なぜですか?」
下げていた頭を上げると水島さんは吉池さんを見て言った。
「この男が一度決めたことを実行しないはずがないよ。絵麻ちゃんのこと好き過ぎて子供のことまで想定しているみたいだし、袖を通す覚悟が出来るように本気で口説いてくるはずだから」
「お前、聞いていたな!?」
吉池さんが怒りを露わにすると、水島さんはペロッと舌を出してから逃げるように店先へと出て行った。
「まったく、あり得ない」
吉池さんの呟きに水島さんと入れ違いに入って来た女性店員さんが答える。
「盗み聞きは良くないと止めたのですが、止め切れず申し訳ありません」
「他の客には絶対にさせないように注意してやってください。せっかくの着付けの技術と着物の知識が台無しになってしまう」
吉池さんがビシッと言うと店員さんは眉根を寄せて曖昧に頷いた。
水島さんが彼女より年下でも、さすがに店主に意見は出来ないような雰囲気だ。
「そうですね。俺から注意しておきます。鈴木さんは彼女の着替えをお願いします」
察した吉池さんは笑顔でそう言うと、小さく頭を下げてから部屋をあとにした。