飼い犬は猛犬でした。
そんな会話をしていると、わたしの目に涼輔くんの姿が映った。
涼輔くんが息を切らしながらドアを開くころ、わたしは大急ぎで厨房の中へと隠れる。
「あっ! 先輩、どこいくんですか〜っ」
後輩ちゃんは驚きながらも涼輔くんの方へと接客をしに向かっていた。
「……昨日の人いますか?」
「えっと……天音先輩のことでしょうかー……」
「……呼んでもらえますか」
「かしこまりましたー……」
後輩ちゃんは厨房へと来るなり、わたしに耳打ちを始めた。
「お呼びですよ先輩ー……なんかオーラめっちゃ怖いんですけどぉ……」
「本名教えてないよね……?」
「大丈夫です! ちゃんと隠しましたよ〜」
「頑張ってきます……」
バイト中である以上、指名されたら逃げ場はない……
というか……皆に優しい涼輔くんのオーラが怖いって、そんなわけ……
あれ、なんかイライラしてる……? 心做しか機嫌悪い気が……
大丈夫大丈夫……学校でのわたしとは別人なんだから知らん顔してれば大丈夫だよ……ほら、笑顔作って。
「おかえりなさいませ、昨日ぶりだね。今日も来てくれてありがとう!」
だけど、涼輔くんの様子は明らかに変だった。