勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
「俺はさ、今まで家にも親にも



反発することばかり考えて生きてきた。



でも、彩梅に出会って、



自分の人生を真剣に考えるようになった」




「九条さん……?」




突然、どうしたんだろう……?




「彩梅の無邪気な笑顔が好きだった。



まわりのひとに感謝して生きてるところ、



まっすぐなところ、素直なところ、



自分の運命を丸ごと受け入れているところ。



彩梅と一緒にいるとただ楽しくて、毎日が輝いて見えた」




嬉しいはずの言葉なのに、



胸の奥に不安な想いが広がっていく。




九条さんは口を堅く結んだまま、



遠くに視線を馳せている。




「……あの九条さん?」




くしゃりと私の頭をなでると、



九条さんがまっすぐに私を見据えた。




無言のまま九条さんと、じっと見つめ合う。




「彩梅、俺たちの婚約破棄が、正式に決まった」




「……え?」




頭のなかが真っ白になった。




表情が消えていくのが自分でもわかる。



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