勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
嫌がる九条さんを無理やり連れて入ったものの、



女の子ばかりであふれかえるハワイアンテイストのお店で



九条さんは、メニューを見て絶句している。




「これが晩飯? 


こんなに生クリームがてんこ盛りになってる食い物が、晩飯? 



じじい達、本気でここ予約したのか?」




「私、パンケーキが夜ご飯で、全然、大丈夫です!」




「いや、俺は無理…っつうか…」




「え?」




「ま、いいや、彩梅が楽しいならいいよ」




九条さんが小さく笑って、メニューに視線を落とす。




サルの人形がぶら下がってたり、キリンの置物があったり、



遊び心満載のお店の雰囲気が楽しくて



キョロキョロと店内を見回していると、九条さんがふきだした。





「友達とこういうところ来ないの?」





「寄り道は禁止されてるし、



パンケーキに2000円なんて、高すぎてとても無理です」





「彩梅は真面目ないい子だね」




そのひとことに、どーんと心が重くなる。




『真面目ないい子』は、



学校のなかでは誉め言葉かもしれないけれど、



『つきあってる女の子』に使う言葉じゃないことくらいは、



私にもわかる。





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