勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
「彩梅さん、夕飯食べていくでしょ?」




散歩から帰ると、



九条さんのお母さんがエプロン姿で迎えてくれた。




「外で食ってくるからいいよ。



つうか、もう彩梅に話しかけるな」




「あら、『彩梅』なんて


自分のものみたいな言い方しちゃって。



西園寺さんからお預かりしてる大切なお嬢様なんだから、



『彩梅さん』でしょう?



こんな可愛い子が千里の婚約者だなんて、



一生分の運を使い果たしたわね」




「正式に婚約したわけじゃない。ほら、いくぞ、彩梅」




「あらあら、案外、千里は独占欲が強いのね。



彩梅ちゃんと女学院の話をしたかったのに!」




私も女学院の話、もっと聞いてみたい!




「彩梅はコタロウを見に来たんだよ。



彩梅は帰る準備しといて。車、出してくる」




バタンとドアをしめて九条さんがガレージに向かうと、



九条さんのお母さんがいたずらな顔をしてこそっと呟いた。




「千里が家に人を連れてくるなんて、



本当に珍しいのよ。



千里のことを知りたければ、いつでも遊びにいらっしゃいね。



あの子の弱み、なんでも教えてあげる。



ピーマンが食べられないこととか!」




「ピーマン⁈」




わわっ! なんだか意外!




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