時には風になって、花になって。
『ぎゃぁぁぁぁーーー…!!!』
『お、お前が何故こんなところに…ッ!!』
気付けばその2匹の首を落としていた。
こんな小娘など放っておけば良いものを。
人間は嫌いだ。
人間は、簡単に裏切る。
『小娘。…なぜ私について来る』
小さな足音は己が歩く度に同じように響いた。
足を止めれば、追い付くように駆けて来て。早足に歩けば、もっと追いかけてくる。
目障りだ。
つまらんことをした。
『私が怖くないのか』
鬼の姿を見せて脅したとしても、獲物を捕らえた鷹のように空を飛んでみても。
その純粋無垢で汚れを知らない瞳は余計に輝くだけだった。
変わった奴だ。
それでいて、懐かしい感覚を思い出す。
(あったかい…)
パクパクと音の無い中で笑い、己の腕の中に入ってきては親に甘える赤子のように身を寄せてくる。
“紅覇、あんたって温かいのね”
己の手を握って無邪気に笑う女にそっくりだった。
『……つまらんことをした』
忘れていた記憶を呼び起こした。
人間と分かり合えるなどとほざいていた頃の馬鹿で惨めで、憐れな自分を。
そっと触れた少女の頬は柔らかく、温かかった。