時には風になって、花になって。




『紅覇…!!おのれ…ッ…!ふざけたことを…!!』


『私の前から失せろ。でなければ…』



ブワッと赤く充血した目から涙が溢れている。

怒り、哀しみ、それすらをも超越した何か。



『羅生門。───…私は今にでも貴様を殺してしまいそうなんだ』



そんな息子の姿に羅生門は微かに笑った。



『…いい目をしているではないか、紅覇よ』



2つの影はもう親子ではなかった。

鬼と鬼。

ただ、それだけ。



『破門だ。貴様など我が一族に要らぬ』



それからまた幾百の時が経った。

人の姿をした青年は山奥の洞窟を拠点とし、人の目の無い場所で静かに暮らしていた。


そんなある夕暮れ時であった。



『ぐっ…、』



たまたま鬼の姿の己を見た人間が放った毒の入る銃弾が左肩を貫通した。

なんとか逃げ、林の中を彷徨っていたが。



『うまそうだなぁーーー』


『人間の小娘はうまいと評判だぜ』



心臓が動いている音が聞こえる。

そんな横たわる幼子を囲む2匹の妖怪。


一瞬死んでいるのかと思ったが、微かに聞こえるその音。



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