時には風になって、花になって。
確かに最近は水牛の世話が忙しくて顔を出せていなかったけどさ。
それでもまさかここまで話が進んでいるなんて思っていないじゃないか。
珍しく長松から呼び出されたかと思えば正装をして来い、だなんて。
そして来てみれば婚礼って………。
「あ”あ”あ”あ”あ”最悪だぁぁぁぁ」
縁は頭を抱えた。
こんなどこの馬の骨かも分からないようなおっさんに、このいたいけな少女を渡すというのか。
それで誰が焼き殺される…?
………オレじゃね???
オレだよね?え、俺じゃん……?
「ちょっとオレ今から出てくるっ!」
「はぁ!?あんたこの婚礼の仲人よ!?馬鹿言ってんじゃないよ!!」
今から紅覇さんを探し出したとして間に合うか。
縁は今にも飛び出す勢いだったが、そんなにも都合良く世の中は回っていないらしい。
「……では只今から婚礼の儀を始めさせていただきます…。
私、今回の仲人をお務めさせて頂く縁と申します……以後お見知りおきを」
オレは正直、サヤには紅覇さんしか居ないと思っていた。
いずれあの人は迎えに来るだろうと思っていた。
だから例えどんなに縁談が破談になろうが、そこまで心配はしていなかった。
逆にホッとしていたくらいだ。