時には風になって、花になって。
それなのに来ないって…。
おい、いいのかよ。
本当にここまで話が進んじまったぞ…。
「では盃の準備を…」
それにオレは何を大人しく仲人をしてんだよ。
「やっぱり駄目です!!」って無理矢理に辞めさせるのもアリなんじゃないか…。
というか、紅覇さんだって絶対にサヤのことが好きなのに。
好き同士一緒になる、それだけなのにどうしてこんなにもすれ違うんだ。
「ではまずは新婦様から…」
なぁ紅覇さん。
あんたが可愛がって育てて、それで美人になった人間の娘は知らないおっさんに奪われちまうぞ。
あんた鬼だろう、妖怪だろう。
なにをこんなに易々と譲ろうとしているんだ。
「ではお次は新郎様……」
その赤い盃が禿げたジジイの手に渡ろうとしている。
オレは伸ばしかけた手をどうすることも出来ずに浮遊させているだけだった。
サヤ、だってお前泣いていたじゃないか。
あれは何に対しての涙だったんだ。
本当は好きな男と結ばれたい、ただの女としての涙だったんじゃないのか。
「だ───」
駄目だ、とオレは叫ぼうとした。