時には風になって、花になって。
青年と少女の元へ、ふわふわ浮遊するように魂は近付く。
青い炎は触れても熱くはない。
小さな掌はそれを大切に包み込むようにして乗せた。
(サヤ、妖怪にさわったの、はじめて)
「…2回目だろう」
どうして?と目線が聞いてくる。
このまま成長などしてくれるな、と柔らかな頬に純粋無垢たる瞳を見つめて紅覇は思った。
「私に触れている。…私は妖怪だ」
お前とは違う。
お前のように一瞬の命などではない。
睡眠をあまり取らなくても生きれる鬼が、たまたま身体を安めたとき。
その瞬間にもお前は年老いてしまうような。
ニコッと笑った少女は首を横に振る。
(“くれは”は、…“くれは”)
私が寝てしまえば、お前は消えてしまうのではないか。
目を覚ましたときには既に息をしていないのではないか。
たかが80年余りの命、何千年と生きてきた己とは違う。
「…戯れ言を」
お前は人の子、私は鬼の子。
童話の中では必ず私は悪役だ。
今すぐにでもお前を食べてしまえる、極悪非道な存在だというのに。